カメラでとらえた姉妹の絆

姉妹の絆ほど深く、複雑な関係性はほとんど存在しない。姉妹であることの意味を写真でとらえようとし続けている1人のフォトグラファーが、そこに見出したものについての本を出版する。

これまでに50組を超える姉妹を撮影し、インタビューしてきたソフィ・ハリス=テイラー(Sophie Harris-Taylor)。このプロジェクトを終わらせるまでに100組を撮ることが目標だという。だが、そこには単なるアーティストとしての試み以上のもの、故郷への思いがあった。「私にも1人姉妹がいるのだけど、その関係はいつだって波瀾に満ちているわ。だから、結局ある程度の距離感が生まれるのよ」と彼女は言う。「要するに、私は強い絆の秘密を探ろうとしているのね。だから、近しい関係にある姉妹に着目してきたというわけ。でもその多様性には、私も被写体自身も驚かされっぱなしなの」

「たいていの場合、女性はエモーショナルな部分でオープンだから、女性同士の1対1の関係性というのは親しさを伴う。歴史的に見ても文学的に見ても、姉妹間だとその親密性はより高くなるの。姉妹の関係性というのは、その強さや重要さにおいて、最も特異なものの1つなんじゃないかしら。どんな友だち関係も凌駕してしまう。このインタビューのあいだに流された涙の量も、その証拠よ」

撮影されたどの女性も個性にあふれているが、ハリス=テイラーによると、プロジェクトの根底には共通したテーマがあるのだという。それは、信頼、嫉妬、記憶、喪失、不機嫌さ、そして無条件の愛情だ。「そうしたものが、被写体の過去や現在の関係において満ち引きするの」と彼女は話す。「大人の姉妹は、多くの場合その関係を修復した経験があるわ。でも(当たり前のことかもしれないけど)、現在の関係の礎となっているのは、子ども時代のようね」

そんなふうに撮影された姉妹の写真と、彼女たちがハリス=テイラーに話した姉妹としてのユニークな記憶をここに紹介しよう。

6歳も年が離れているにもかかわらず、アリスとフローは仲の良い子供時代を過ごした。だがアリスが10代にさしかかると、しばしば衝突したようだ。なんでも、成人したばかりのころにその関係を「学び直す」必要があったのだという。現在では仲睦まじく、親友でとして共に暮らしている彼女たちによると、自分たちの関係性を最も顕著に示すのは、その年齢差と、それが子ども時代にどう影響したかだという。一例を挙げると、アリスが13歳のとき、彼女には親が2人と妹が1人いた。だが、フローが13歳のとき、彼女には彼女自身と両親しかいなかったのだ。なぜなら姉はもう家を出てしまっていたから。テクノロジーという要素も、彼女たちのティーン時代に違いをもとらすこととなった。フローはインターネットと携帯に囲まれて育ったが、アリスは違う。つまり、両親はフローをアリスよりリラックスした環境で育てることになったのである。さらに両親はアリスを母性にあふれた気遣いのできる子だと思ってきたが、実はフローの方がより「しっかり」して責任感もある女性なのだという。

彼女たちがソフィに話したのは、現在と子供時代のケンカについて。そして、お互いの弱点を知ることがときに刃となること。しかしまた、彼女たちがお互いに秘密を持たず、欠点をカバーし合ってきたことも口にした。つまり、アリスとフローは、姉妹としても友人としても、互いに相手を安心させる存在となってきたのである。

アリス「フローは私に違う見方を教えてくれる存在だって思う。彼女がいなかったら、私の人生は困難を極めたはずよ。自分の思考がよくわからないときも、フローはちゃんと私のことをわかってくれているって感じるの。月並みな言い方だけど、私より私のことをわかってるって感じ」

フロー「Sister2Sisterの『Sister』って曲に、こんな歌詞があるのよ。『親友よりもわかり合えて、最後の最後まで一緒にいてくれるひと』。子供時代にケンカして、自分が悪いんだってなんとなくわかってるとき、この曲をかけたの。ドアを開けて、ベッドに座って……。そしてアリスがやってきて『もういいわ』って言うまで待ってたわ」

マレーシアの首都クアラルンプールから数時間離れた小さな町で育ったアンとメンは、かなり性格の違う子供だったという。アンは自身を「男の子ギャングたちのリーダー」のような存在だったと話す。おてんばで反抗的だった彼女は、憧れのツイッギー(Twiggy)と同じようにミニスカートとお揃いのパンツを履いていた。アンが男の子たちを引き連れて子牛を乗り回したり、おもちゃのカタパルトや銃の制作にいそしんでいたころ、メンは「家でいい子にしていた」そうだ。そしてわがままな姉のことがいつもうらやましかったのだという。反抗的な性格ゆえにボーディングスクールに放り込まれたアンは、そこで英語の能力を得た。そしてメンが代わりにやらなければいけなくなった実家での家事や仕事から解放されたのである。メンはそうした義務をこなしながら、中国式の教育を受けることになった。

4人きょうだいの真ん中に生まれたこの2人は、子供のころはそれほど仲が良くなかった。そして大人になっても、その性格の違いは変わることがなかったという。子育てに関してもまったく違うアプローチをし、お互いのアドバイスを無視することもしばしば。しかしそんな状況も、歳を重ねるごとに変わっていった。今ではだんだんお互いが身近になったと彼女たちは言う。もちろん性格の違いは健在だが、それを片方が必要とすることもあるのだ。

メン「愛は言葉をつむぎません。ですから、たとえ何年も話していなくても、何か問題が起きたとき、彼女は電話をかけさえすればいいのです。私たちはすぐにかけつけるでしょう」

アン「あなたは1人じゃない。大事なのは、あなたは1人じゃないということ」

ユニティとジータは、お互いをかなり頼っているのだという。よくどちらかの寝室で、相手の抱えている悩みについて話したり、今気になっていることについておしゃべりするのだそうだ。ジータが初めて髪をお下げにしたときや、初めてコンタクトをしたとき、ピアスを開けたとき。そしてレザージャケットを着たときも。

ユニティは物静かなタイプだが、ジータは「破天荒な」性格だ。少なくとも、周りに誰かいるときは。だが、2人とも分かち合うことに長けている。例えば同じおもちゃやCDを気に入ったとき、ママがどちらにそれを買うかなど問題ではないことを彼女たちは知っているのだ。だって結局2人とも使えるんだから。基本的に彼女たちの趣味は似ているので、そんな考え方でうまくいくのである。一番年下のジータは、ユニティが何か持っていたとしても、おとなしくしているのが得策だと学んだのだという。カッコいいジーンズとかトップスとか、なんでもすぐに自分に回ってくるんだもの。

昔から姉にはよくあることだが、ユニティはジータが自分の真似をするのは嫌いだという。例えば、誕生日に同じことをしてほしがるとか。もちろんそれが憧れや賞賛ゆえの行動だとはわかっているが、ときに耐え難く感じることもある。2人は一緒にジェットコースターに乗る話をしてくれた。「きょうだいと一緒だと、心がつながってるみたいに感じるの。だって2人ともすごく怖がって、まったく同じことを感じるでしょ」。つまりほとんどテレパシー的なつながりを感じるのだ。彼女たちはどちらも有意義な議論を好むが、相手がきょうだいだと、ものの数分で議論に片が付いてしまう。

ユニティ「怒っているとき、たまにすごく早口でジータに話すことがあるの。彼女ならわかってくれるから。私たちはお互いの心を読むことができるのよ。何を考えているか正確にわかっちゃう。うーん、まあ正確にではないかもだけど。だってそんなの怖いもの。でも同じことを考えたり感じたりっていうようなことね」

ジータ「お姉ちゃんがいるのっていいわよ。すごくすてき。頼れる人がいるんだもの。新しい学校に行って迷子になっちゃったとき、そこにいてくれるし。それに、議論できる人がいるってことだもの」

この6姉妹のグループは規模が大きすぎて、最終的にはさらに小さな集団を形成するに至ったのだと本人たちは言う。そのため、だいたい一番年下の2人が最も仲が良く、10代のメンバーが協力し合うのだそうだ。フローとオッキは、自ら「ホールディング部隊」と呼んでいる役割を担っている。オッキは年下と年上の姉妹のギャップを埋め、フローは年長者として全員のサポートをするのだという。さらに3人の兄弟もいるという彼女たち。こんな大集団では、簡単に個性が埋没してしまいそうだが、この姉妹の会話を聞いていると、それが間違っていることに気づかされる。例えば、皆口を揃えてオッキが一番議論好きだとか、ビーはいつでも注目を浴びたがると言う。クララとミリーはファッションのことでケンカし、セシリーは1人の時間を楽しむタイプなのだそうだ。

彼女たちはとてもクリエイティヴなグループである。モリッシー家のYouTubeチャンネルをつくって、自作の動画を公開していたこともあるのだそうだ。フローはミュージシャンで、ツアーで家を開けることもしばしば。これは姉妹にとってひどく痛手だ。フローもまた、すぐに成長してしまう年下の子たちを見守れないのが残念だと言っている。残りの姉妹は、フローがいないあいだとても寂しい思いをするのだそうだ。しかし、年の差や距離の問題など、モリッシー家にとっては取るに足りないこと。セシリーは、大人になったら自分も7人子どもを産みたいと考えている。

セシリー「きょうだいはいつも優しいし、たいてい裏切ることはないわ。フローがここにいないときは寂しい。だっていつも笑わせてくれるし、なんでも上手なの。もっと彼女から学びたいわ」

クララ「いつでも話したり、笑いあったりする人がいるってこと」

10歳近く年が離れているため、リアが生まれるまで、アンビは自分がひとりっ子のように感じていた。きょうだいを切望していたことを覚えているという。アンビが小学生くらいでリアがまだ幼児だったころ、アンビはリアの「第2のお母さん」で、リアはアンビの「生きた人形」のようだった。学校が長期休みに入ると、アンビはリアを連れてアートギャラリーや美術館、劇場に足を運んだ。たった6歳の少女が、年の離れた姉のクールな友人たちと一緒に遊びに出かけていたのである。

彼女たちによると、両親はどちらも「ひどく悩ましい過去」を持っており、さまざまな理由からいわゆる普通の家族のようには機能していなかったそうだ。彼女たちの母親は家族を支えるために身を粉にして働かなくてはならず、父はといえば音楽業界で不定期の仕事をしていた。両親はとても若く、それゆえに交友関係も活発だったのである。自転車の乗り方を教わったり、決まった時間に食事を食べるなどの「家族らしいこと」はしなかったが、アンビもリアも、このユニークな家庭を楽しんだと話す。だからこそ自分たちは独立心旺盛で、才覚があり、社交的な女性に育ったのだと言うのだ。アンビがリアに対して母親がわりとなったことも、彼女たちの強く個性的な絆を育む一助となった。

リア「アンビが大学で家を離れたとき、心がかき乱されたわ。すべてを失ってしまったような気がしたの。彼女がいない状況に、ぜんぜん対処することができないのよ」。

アンビ「私もまったく同じように感じたわ。芝居がかって聞こえるかもしれないけど、リアに長いあいだ会っていないと、痛みを感じるの。彼女を抱きしめなきゃいけないのよ」

ここに掲載した会話は、ソフィ・ハリス=テイラーによるインタビューから抜粋したもの。フルバージョンのインタビューは、2017年後半に出版予定。

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