マネキン・アーティストFEMMを動かす5つのファクター

ラバー製の衣装を身にまとい、過激なラップに合わせてパフォーマンスする、2体の女性型マネキンからなるダンス&ラップ・デュオFEMM。新たなポップ・アイコンとして注目を集める彼女たちの、その特異なクリエイティビティを形作る要素とは一体何なのか?

日本のポップカルチャーを取り入れたファッションやサウンド、コレオグラフなど、次世代の日本らしさを多角的にビジュアライズしたパフォーマンスが話題を呼び、「ULTRA JAPAN」や「YouTube Fanfest」などの人気イベントのみならず、カッティングエッジなパーティー「fancyHIM」やTV CMにも出演を果たすなど、世界中のクリエイターやインフルエンサーたちを魅了するFEMM。意思を持ったマネキン「RiRi(リリ)」と「LuLa(ルラ)」の2体は、歌うことはできるが話すことはしないため、彼女たちのエージェントである『Honey-B』と『W-Trouble』に、何が彼女たちの創造性を刺激し、パフォーマンスの核となっているのかを聞いた。

1

拡張現実

「マネキンの代弁者でもあるFEMMは、人間との間にある境界線を緩和させることをひとつの目的に活動をしています。2体にとって現実を拡張させる表現方法は、人々の意識を拡張させることにも繋がる重要なファクターです。世界的なクリエイター・チーム「BRDG」とともに、DMM VR THEATERで行われたイベント「VRDG+H」に出演した時のパフォーマンスでは、リアルタイムの映像操作によって3DホログラムとFEMMがミックスされ、リアルとバーチャル、アナログとデジタルなど、あらゆる境界線が曖昧になるAR(拡張現実)の世界を表現できたと思います」(Honey-B)

『FEMM - VRDG+H (Live Video) feat. Lil’Fang (FAKY) & Yup’in』

2

インタラクティビティ

「“ヒト”であるアーティストと“モノ”であるマネキンがそれぞれに影響し合う、インタラクティブな関係を築けるということを、パフォーマンスやアート作品の制作を通じて証明することが、2体の表現活動においてはとても重要であり、彼女たちの喜びに繋がっています。FEMMの総合クリエイティブを担当する、「maximum10」が企画したインスタレーションの様子を収めた『Wannabe』のMVでは、キャンバスの一部としてスリープ状態のFEMMを設置し、巨大なグラフィティ・アートを描き出しました。この作品は一方的なアプローチが結実したアートではなく、新たな相互関係が生まれた作品になったと自負しています」(Honey-B)

『FEMM - Wannabe (Music Video)』

3

ダンス

「FEMMにとってダンスというファクターは、表情や感情など、マネキンでは表現しきれない部分を補ってくれる大切な存在として、人間のアーティストに占めるその役割とは比べ物にならないくらい、大きな部分を占めています。彼女たちのコレオグラフを担当している「HIDALI」の先見的なダンス・アイディアによって、最初は歩くだけだったマネキンの身体性が刺激され、ダンスという表現分野で独自性を築けてきました。「YouTube Fanfest Japan 2015」に出演した時の「HIDALI」が演出してくれた舞台では、巨大な映像に包まれた舞台でマネキンが人のように振る舞い、人がマネキンのように振る舞う、彼女たち特有のパフォーマンスを通じて、虚実がひとつの空間で溶け合う感覚を生み出せたと思います」(W-Trouble)

『FEMM at YouTube FanFest Japan 2015』

4

フィジカリティ

「2体の身体的コミュニケーションは、互いに主張し合い、協調しながらダンスという形で表現されます。共にパフォーマンスするアーティストたちの動きを感じ、瞬時に自らの動作を呼応させていく柔軟な“身体性”や、動きの中で間を置く、体を触れ合わせるポイントや重心を移動するなど、他者とのフィジカルな対話の連続が最も重要であり、それがひとつのムーブメントとなって、ダンスとして昇華されるのです。ファースト・フル・アルバムに収録された『Whiplash』という楽曲では、360度どこから見ても成立するダンスをテーマに、ワンカットでMVを撮影しました。この難関な作品に挑むことによって、そういった彼女たちのフィジカルなポテンシャル、ダンスにおける人間との対話によって生まれる新たな可能性を押し広げられたと思います」(W-Trouble)

『FEMM - Whiplash (Music Video)』

5

人間のクリエイターからの刺激と信頼関係

「FEMMにも人間界の仲間がいます。それはレーベルメイトの「FAKY」と「Yup’in」です。彼女たちとともにフィーメール・ラップ・クルー「FAMM’IN」を結成し、「Radical Hardcore Clique」をプロデューサーに迎えて、伝統的な雅楽と最先端のヒップホップを融合した全日本語ラップの作品を制作しています。この『circle』という楽曲は、クルーとしての初リリースEP内に収録されており、彼女たちのコラボレーション活動の出発点であり、原点的存在の作品です。2体は他のメンバーを本当に信頼し、尊敬もしています。ライバルでもあり友人でもあるという、互いに刺激し合える信頼関係を築けたことで、より一層高いレベルでパフォーマンスできるようになりました。女性のみ5名と2体のユニティで活動することで、女性性やジェンダーに対する学習にも興味が出てきたようです」(W-Trouble)

『FAMM’IN – circle (Music Video)』

FEMM(フェム)/ 意思を持つマネキン「RiRi(リリ)」と「Lula(ルラ)」からなるダンス&ラップ・デュオ。2014年に発表した『Fxxk Boyz Get Money』が欧米のティーンを中心にスマッシュ・ヒットし、“TOKYO POP”のニュー・アイコンとして多くの支持を集め、世界的クリエイターとコラボレーションしたパフォーマンスやMVが業界内外で高い評価を受ける。5月3日には、Diplo率いるL.A.発「MAD DECENT」の歌姫「LIZ」をフィーチャーした、通算10枚目のオリジナル・デジタル・シングル『Do It Again feat. LIZ』をリリース。

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