女性のスタイルを模索する、5人のイラストレーター

イラストレーターのオンラインコミュニティに所属し、女性のスタイル探求するためにその才能を惜しみなく注ぐ、5人の開拓者たち。彼女たちが作品のなかに思い描く、女性像とは?

ポーリー・ノール(Polly Nor)

ロンドンを拠点に活動するポーリー・ノールは「女性とその内なる悪魔」を描いている。とはいえ、この言葉はその作品を言い表すにはいささか簡潔すぎるかもしれない。ノールが描く題材にはもっと深みがあるのだ。女性のセクシュアリティに対するその風刺に富んだ作風は、大衆を困惑させ、不安定さや亀裂、社会的圧力を際立たせる。

「魅力的でありさえすればいいっていうような、女性をモノとして扱うイメージにはもう飽き飽き」とノールは言う。「自分のイラストを通して、違ったものを見せたいと思ったの。キャラクターが魅力的かどうかっていうことよりも、彼女たちがどういう気持ちで、何を考えているかに焦点を当ててね」。

一日の終わりに、家でくつろぎ、タバコに火をつけた悪魔が、チャックを開けて人間の中から出てくる。ノールが描くそんなグロテスクなイメージは、閉ざされたドアの向こうにある女性の姿をさらけ出し、これまでのイメージに反旗を翻す。

このキャラクターはノールのイマジネーションの暴走というだけではない。語られていない部分を自分の言葉で埋めるよう、観る者に仕向けているのだ。ノールの作品に登場する悪魔は、敵か味方かすらはっきりしない。その存在が善なのか悪なのか、その判断は私たちにゆだねられているのだ。

「あれは女性キャラクターの想像の一部として描いているの」。悪魔についてノールはそう話す。「他の世界とは切り離された、彼女のグロテスクで不安定な部分ね。不安やフラストレーション、欲望が悪魔の姿で現れたのよ。ときに黒く、ときにセクシャル、ときに悲しい感情となるの。描くときの私の気分によって変化するわ」。

ローラ・キャラハン(Laura Callaghan)

今どきの生活で遭遇する苦難や試練を題材に、映画『グリース』に登場するリッゾのような敵意に満ちた視点で描かれた、キャラハンの作品の女の子たち。多様なスタイルの彼女たちが浮かび上がらせるのは、現代社会の女性をとりまく現実だ。

アイルランド生まれのキャラハンがファッションイラストの世界から身を引いたのは、そこでは業界受けする型にはまった女性の姿しか描けなかったから。そんな世界から離れ、スキルアップするため、キャラハンは作品づくりに注力するようになる。

「心から楽しんで作品をつくるようになってから、自分が描いていておもしろいと感じるのは女性にまつわるストーリーだってわかったの。キャラクターには多様性を持たせたくて。汚いカーペットの上で二日酔いになって寝転んでいたり、観葉植物を抱きしめてたり、断崖絶壁を登ってみたり、スウェットで対戦ゲームに興じていたり、いろんなことにその体を使うの。リアルで、現実の世界に結びつくようなものをとらえたかったのよ」。その作品の中の女の子たちは、世界のいろいろな場所からやって来る。賢くてクールな彼女たちの体は強靭かつ豊満に描かれるが、過度なセクシーさはない。

18万人のインスタフォロワーを抱えるキャラハンは、2日以上投稿を休むと罪悪感にかられるという。ネットで人気が上がると責任も増えるというのはよく聞く話だが、投稿の注目度も上がった今、彼女にはさらなる責任がのしかかってくる。「作品を見せつつ意味のあることを言うんならいいけど、そうじゃなければ無駄な労力って感じよね」。キャラハンは笑いながらいつの日か「心底バカなものを描いて」みたいのだと話した。

では、インスタグラムの世界でどんどん増殖する、女性をモチーフにしたイラストはどういう位置づけなのだろう。「女性のイラストはそれぞれがお互いを補完し、引き立てあうわ」と彼女は言う。それには激しく同意だ。

サラ・アンドレアソン(Sara Andreasson)

「理想的なものとして何度も繰り返し世に出てくる体を見るのは、もううんざり」。スウェーデンのイラストレーター、サラ・アンドレアソンはそう話す。「それと違うものを描くのはすごく新鮮。それに、10代の頃ずっと拒食症に悩まされた身として、こういうイメージが及ぼす害には個人的にすごく気を使っているの」。

ヨーテボリの〈アカデミー・オブ・デザイン・アンド・クラフツ〉でプロダクトデザインと工学を6年間学んだのち、アンドレアソンは家具デザイナーというそれまでの夢から離れ、イラストの世界へと進んだ。最近ロンドンに移り住んだ彼女の作品では、独特の色使い(ブルーとマスタードにピーチ系オレンジのアクセントが秀逸な色世界は必見)や、ソフトな批判性、フェミニズム、平等といったテーマが、その強く悪びれない作風を唯一無二のものにしている。つい最近女性ボディビルダーにハマったというアンドレアソンだが、その作品には肉体の常識に挑戦するさまざまな体が描かれている。

「創作上生じる判断には、最新の注意を払っているの。ステレオタイプを押し付けないようにしているのよ……。私はフェミニストだと思われているし、作品のいくつか(全部じゃない)はソフトな政治色があるしね。いつもはっきりそういう思いが現れるわけじゃないけど。だって作品の大部分は、クライアントと仕事をする中で、私の信条を貫き通そうとしてでき上がったものだから。だいたいは、女性っぽいモチーフの体を“もっとスリムにして”とか、肌の色を“もっと何か明るい色に”変えてって言われたけど同意しないとか、そういうシンプルなことよ」。

親友のジョセフィン・ハードステッドと共に、女性/同性愛者クリエイターのためのジン『BBY』を創刊したアンドレアソン。「このコミュニティに貢献したいと思ったの」と彼女は話した。「お互い助け合うことがどれほど大切か、じゅうぶんに伝えきれないから」。

カーリー・ジーン・アンドリューズ(Carly Jean Andrews)

「ときどき頭の中で声がするの。これこれこういうふうに描け、みんなが絶賛し、注目を浴びるだろう、って。でもそれってちょっと気持ち悪い創作の仕方よね」。ポートランドを拠点に活動する異端のイラストレーター、カーリー・ジーン・アンドリューズはそう話す。「みんながわたしの作品を見られなくなるっていうシナリオがもしあったとしても、何も変わらないわ。今までと同じように描き続けると思う」。

アンドリューズの作品の多くは、マンガ的でちょっとエロティックな女性を、ピエロの化粧やもじゃもじゃの毛といった一風変わった要素でアレンジしたものだ。臆することなく女性のセクシュアリティに挑んだアンドリューズの作品は、女性のセクシュアリティを中心に取り上げながら、リアルな女性の裸体を真っ白なキャンヴァスのように使ってアイデアを表現している。だが、作品のセクシュアルな部分には、かなりのユーモアが込められている。

「セックスやセクシーさはすごくおもしろいものよ。イラストの女の子がたまに裸だからっていうだけで、人は私をセックス狂のイラストレーターだと思い込むわ。ただ体を描くのが好きなだけなのに。体はまっさらの石板よ。私は裸からセックスを思い浮かべることなんてない。その分野で最も優れているのはロバート・クラムね。彼の作品を見ると、自分の体が“わかる”の。私の作品を見た人が自分のことを“わかる”ようになれば最高ね」。

アンドリューズの魅力は、やるべきことをやっているその作品だけでなく、言うべきことを言う才覚にもある。「バービ・ベントンやバーブラ・ストライサンド、スケアリー・スパイスや『デモリションマン』のサンドラ・ブロックみたいに、おバカで楽しくてパワフルでスマートでキュートな」ものが恋しいとアンドリューズは言う。「最高の自分でいることができれば“イケてる”人になれるわ」。彼女は正しい。結局のところ、大切なのは自信なのだ。

パンテハ・アバレシ(Panteha Abareshi)

17歳のパンテハ・アバレシは、今までとは違う方向から女性を描く。ドライで斬新な雰囲気と明るい色彩が織りなすその作品が表現するのは、外面から浮かび上がってくるエモーションなのだ。

「有色人種の女の人しか描かない」とアバレシは言う。「グラフィックアートの世界でよく描かれる女性は、今でも欧米系の美的水準に見合った人たちがほとんど。女性とはこういうものっていうことを決められる人は誰もいないんだってことを、みんなに知ってもらいたいと思っているの」。

カナダはモントリオール出身の彼女だが、現在はアリゾナ州のトゥーソンを活動拠点としている。その父親はイランからの移民、母親はジャマイカ出身だ。鎌状赤血球症βサラセミアという難病(慢性的に激痛に襲われる)を抱え、精神疾患もある彼女の作品が、その苦難を反映したものであるのは不思議なことではない。複雑な感情をコントロールし、またそこから逃れるためにイラストを描くアバレシ。精神疾患や有色人種の女性に対するステレオタイプに挑んでいる。「私自身、鬱や不安にさいなまれていて、自分の感情を表現できないなってよく感じるの。周囲に対して“悲しい”って感じる理由もわからないし。イラストを通してなら、自分の中にある表現することが難しい感情や、微妙な想い、それに感覚をかたちにすることができるの」。

アバレシの作品には、映画『ヘザース/ベロニカの熱い日』でのウィノナ・ライダーに見られるような、ちょっとブラックなユーモアがあると言われている。最近イラストとテキスタイルデザインを学ぶ大学を決めたばかりのアバレシだが、2017年のナショナル・ヤングアーツ賞を受賞。泣くことの有用性が過小評価されていると主張し、反ロマンティックであることに誇りを持つ彼女は、熱心な実存主義者でもある。

「女性と認識されている若い人たちに、デートやセックスに関心を持たないのはすっごくいいことなんだって知ってほしい。私たちは、小さなころから男性の気を引くように教えられているわ。私たちの価値を決められるのは男だけなんだって思いこまされているの。でもそんなの、まったくの戯言よ」。

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