映画界を席巻するゴールデンガール、リリー・タイエブ

2015年の映画『あの頃エッフェル塔の下で』に出演し、注目を集めた17歳のフランス人女優リリー・タイエブ。進学準備のさなかにインタビューに応じてくれた彼女が語ったのは、自らの世代、10代の恋愛事情、気ぜわしい現代社会でマイペースを貫くこと。

パリのサン・マルタン運河での待ち合わせに現れた17歳のフランス人女優リリー・タイエブ(Lily Taieb)は、眼鏡をかけ、堂々としていた。そして、私たちの目の前でショルダーバッグから中身を取り出し始めたのだ。筆箱、お守り数個、そして一番大切な、絵がたくさん描かれたスケッチブック。「仲間を描くのが大好きなの」。彼女自身や撮影スタッフの絵を私たちに手渡しながら、彼女はそう言った。学校をやめて家での勉強に切り替えてからというもの、映画の撮影現場が彼女の新しい友達づくりの場となった。友人のリリー=ローズ・デップ(Lily-Rose Depp)とともに、この若きスターはカンヌを熱狂の渦に巻き込み、ファッションショーにも引っ張りだこの存在となる。しかし周囲の騒ぎとは裏腹に、リリーは、最近多い“大人気なのに地に足のついたティーン”の1人のようだ。

「自分の世代のことをよく考えるの」。緑茶のカップを口に運びながら彼女はそう話す。「だって、私もしっかりそこに属しているから」

アルノー・デプレシャン(Arnaud Desplechin)がメガホンをとった『あの頃エッフェル塔の下で』がたちまちヒット(ディレクションや音楽がいくつかの著名な映画賞から評価され、6つの賞を贈られた)し、リサ・アズエロス監督(Lisa Azuelos)の『ソフィー・マルソーの秘められた出会い』にカメオ出演を果たしたリリーは、下馬評に反し、その後ひっそりと普通の生活に戻っていった。「静かなひとときって大切よ」。賢い。賢すぎて、1日をどのように過ごすかなどという質問さえしにくいほどだ。ナイトクラブはどう思う? 「ばかげてるわ」。お酒やタバコは? 「大嫌い」。ドラッグについては? 「興味ない」。じゃあライブに出かけたりとか? 眉をしかめて一考したのち、彼女はこう言った。「ああ、そうそう。先週、ザ・ウィークエンドのライブに行ったわ。大騒ぎが始まるまではよかったわよ」。言葉はとても速く流れていってしまう。リリーはときどきその影響力を認識するために立ち止まらなければならないのだ。「説明しにくいんだけど、大きくなるにつれて、知らない人と一緒にいると居心地悪く感じるようになってきたの」。

社交的なイベントに参加するよりも、リリーは友人たち、特に若手俳優として活躍するボーイフレンドのタラ・ジェイ・バンガルテルと有意義な会話をするシンプルさのほうを好む。「彼と出会ったのは去年の夏。フェリックス・ド・ジヴリの初の短編映画『Journée Blanche』の撮影中よ。たちまち恋に落ちたわ」。そう話す彼女の目は、『あの頃エッフェル塔の下で』に登場する役者たちを思い起こさせる輝きを放っていた。この映画は、アルノー・デプレシャン自身の初恋の記憶を、2015年を舞台に描いたものなのだ。「いつも一緒にいたいって思う関係を築いたのは初めてのことよ」。

リリーと話していると、気づかないうちに、それとなく話題が変わっている。「私ってちょっとおかしいの」。カップの底に視線を落としながら、彼女はそんな告白をした。私たちがそんなことはないと言っているうちに、リリーは話題を4つの福音がおさめられたアイルランドの写本『ケルズの書』へと移してしまうのだ。「この深遠で神秘的な本にすごく興味があるの」。私たちがなんとかその質問にたどりついたときには、リリーはもうすでに香りや、それが自身の記憶にどう結びつくかについて話し出していた。「説明のつかない現象の1つ」だと感じるそうだ。

This Week

和洋新旧の混交から生まれる、妖艶さを纏った津野青嵐のヘッドピース

アーティスト・津野青嵐のヘッドピースは、彼女が影響を受けてきた様々な要素が絡み合う、ひと言では言い表せないカオティックな複雑さを孕んでいる。何をどう解釈し作品に落とし込むのか。謎に包まれた彼女の魅力を紐解く。

Read More

ヴォーカリストPhewによる、声・電子・未来

1979年のデビュー以降、ポスト・パンクの“クイーン”として国内外のアンダーグランドな音楽界に多大な影響を与えてきたPhewのキャリアや進化し続ける音表現について迫った。

Read More

小説家を構成する感覚の記憶と言葉。村田沙耶香の小説作法

2003年のデビュー作「授乳」から、2016年の芥川賞受賞作『コンビニ人間』にいたるまで、視覚、触覚、聴覚など人間の五感を丹念に書き続けている村田沙耶香。その創作の源にある「記憶」と、作品世界を生み出す「言葉」について、小説家が語る。

Read More

川内倫子が写す神秘に満ち溢れた日常

写真家・川内倫子の進化は止まらない。最新写真集「Halo」が発売開始されたばかりだが、すでに「新しい方向が見えてきた」と話す。そんな彼女の写真のルーツとその新境地を紐解く。

Read More

動画『Making Movement』の舞台裏にあるもの

バレリーナの飯島望未をはじめ、コレオグラファーのホリー・ブレイキー、アヤ・サトウ、プロジェクト・オーらダンス界の実力者たちがその才能を結集してつくり上げた『Five Paradoxes』。その舞台裏をとらえたのが、映画監督アゴスティーナ・ガルヴェスの『Making Movement』だ。

Read More

アーティスト・できやよい、極彩色の世界を構成する5つの要素

指先につけた絵の具で彩色するフィンガープリントという独特の手法を用いて、極彩色の感覚世界を超細密タッチで創り出すアーティスト・できやよい。彼女の作品のカラフルで狂気的な世界観を構成する5つの要素から、クリエーション誕生の起源を知る。

Read More

ハーレー・ウェアーの旅の舞台裏

写真家ハーレー・ウィアー(Harley Weir)が世界5カ国に生きる5人の女性を捉えた旅の裏側、そして、ドキュメンタリー映像作家チェルシー・マクマレン(Chelsea McMullen)が現代を象徴するクリエイターたちを捉えた『Making Images』制作の裏側を見てみよう。

Read More

『Making Codes』が描くクリエイティヴな舞台裏

ライザ・マンデラップの映像作品『Making Codes』は、デジタルアーティストでありクリエイティヴ・ディレクターでもあるルーシー・ハードキャッスルの作品『Intangible Matter』の舞台裏をひも解いたものだ。その作品には、プロデューサーとしてファティマ・アル・カディリが参加しているほか、アーティストのクリス・リーなど多くの有名デジタルアーティストが関わっている。

Read More

ローラ・マーリンが表現する、今“見る”べき音楽

イギリス人のミュージシャン、ローラ・マーリンのニューアルバムに満ちている“ロマンス”。男っぽさがほとんど感じられないその作品は、女性として現代を生きることへの喜びを表現している。

Read More
loading...