この世を変えようと目論む一匹狼のスタイル提唱者、フィービー・ダール

世の中をよくするためのアイデアがほしいと思ってる? フィービー・ダール(Phoebe Dahl)はまさにそう考えて、自身のブランド〈Faircloth & Supply〉を立ち上げた。徹頭徹尾エシカルに、そしてオーガニックにつくられた彼女の服。なんと、売れるたびにネパールの女子学生までをも救うのだ。

27歳のフィービー・ダールは、自らがかつて挑んだ戦いを一笑に付した。「簡単にできそうな気がするわよね!」 しかし、それは容易いことではない。3年前、彼女は自らの会社〈Faircloth & Supply〉を設立した。LAに拠点を置くアパレルラインで、ベーシックなものからドレッシーなものまで、幅広く扱う。禅を思わせるシンプルなデザインのアイテムは、そのすべてが自然素材を使い、地元のエシカルな工場で生産されている。だが〈Faircloth & Supply〉は、着心地の良いシックな服を求める現代の女性だけに向けられたものではない。このブランドの服を買うたびに、世界最貧国のひとつ・ネパールで暮らす学齢期の女の子に制服が送られるのだ。ネパールではいまだ性差別が根深く、制服を持っていない女の子は学校に行くことができず、将来のさまざまな選択肢も限られたものになってしまう。世界に広がる貧困を食い止めるには、女性への教育が不可欠なのだ。また、同時に“使い捨てファッション”への啓蒙を行うことで、フィービーはファッションのパラダイムを変えようとしているのだ。一度に買えるのは、クラシックなTシャツ1枚だけ、と。

こんにちは、フィービー! 服をつくりたいという気持ちに気づいたのは、いつのことですか?

えっと、ニューメキシコのサンタフェに住んでた私のおばあちゃんは、アンティークのファブリックを扱うお店をしていたの。小さいころ、おばあちゃんは私にいろんな布地の違いを教えてくれたわ。これは18世紀の布なのよ、とかね。アンティークリネンのテーブルクロスがあれば、おばあちゃんはそれできれいなバイアスカットのナイトガウンをつくったわ。見てるだけで、すごく刺激になった。7、8歳のときに私が初めて縫い上げたのは、小さなフランス風のベレー帽。レースの生地でつくって、てっぺんにはポンポンをあしらったの。学校の中で何がしたいか分かっている子は、私くらいだった。いつだってやりたいことは明らかだったのよ。

あなたはとてもユニークなセンスを持っていますよね。そしてそれは、あなたのつくる服に一番強く反映されていると思います。

だって私自身のスタイルが元になっているんだもの。自分が着たいか、実際に着るものしかつくらないわ。「私が着たくないものを、ほかの誰が着たいっていうのよ?」っていう考えなのよ。素材は自然のもの、リネンとコットンしか使わない。快適でシックであることが、美しさのすべてだもの。旅をして、教養があって、週末はどこかで羽を伸ばして、モノは鞄の中にポンポン入れちゃって、でもスタイリッシュでシックな女性のための服なのよ。この服を着る女性には、快適でシックでセクシーでパワフルな気持ちになってほしい。肌なんかぜんぜん見せなくてもね。身につけているものが心地いいという感情は、内側からわき出てくるの。自信までをも身にまとっているような気分になるのよ。タイトなジーンズを穿いてる女の人って、最近見ないじゃない。ブリジット・バルドーみたいなエフォートレス・シックが主流になってるでしょ。

〈Faircloth & Supply〉社が傑出しているのは、その大いに人道的な部分だと感じます。

地域社会への貢献は、ずっと積極的に続けているの。若いときは、障がいを持っている人たちと6年間働いたわ。だから〈Faircloth & Supply〉を立ち上げたときも、何か社会に還元するのは当然のことだったの。そういう分野で、私は本当にいろいろなことに関心があるから、女性の権利と、障がいを持った人たちと、それから動物たちと、どこに還元しようかってすごく迷ったわ。正直なところ、今でも迷い中。動物たちにも何かしてあげたいけど、今はネパールの女の子のために時間を費やしているの。それってすごく素晴らしい時間よ。

その女の子たちのことは、どうやって知ったのですか?

友達とディナーをしていたんだけど、そのときその子は『Girl Rising』っていうドキュメンタリーを制作していたの。第3世界で起こっている教育に関連した性差別についての作品だったんだけど、先進国ではほとんど知られていない内容だったわ。彼女の話はすごく魅力的で、心にずっと残ってた。それからものすごく勉強したんだけど、深く知れば知るほど興味が増していったの。そして、ある小さな草の根のチャリティ活動に参加したくなっちゃって。そこなら、ただお金を寄付するだけじゃなくて、実際にチャリティに参加できそうだったから。そこで自分の活動が、何かを変えるところを見てみたかった。ネパールにあるその素晴らしい会社はGWPというんだけど、すっごく小さいのよ。ウェブサイトときたら、90年代に作ったんじゃないかと思うくらい。でも、私たちは力を合わせて5千人もの女の子たちを学校に上げたのよ。

すごい! とても嬉しかったでしょう。

すごくスペシャルな気持ちになったわ。何度か足も運んだんだけど、一番印象に残っているのは、あるネパール郊外の学校を訪問したとき。制服を手にしたら、みんな本当に興奮しちゃって。アメリカの生徒とはまったく違う。その女の子たちったら、着てた服を脱ぎ捨てて、制服に着替えたわ。彼女たちにとって、制服が意味するものはたくさんあるの。将来とか、女性だからといって抑圧されることから脱する可能性とか。女の子の中の1人が、私にこう話してくれたの。学校のない日も、制服を着るって。そうすれば人身売買の人から身を守ることができるから。人身売買業者は、制服を着た少女たちには手を出さないの。そういう子は教育を受けていて、彼らの正体を知っているし、簡単に騙して連れ去れないから。女の子たちにとって、制服はたくさんの意味を持っているのよ。

素晴らしいけれど、同時にとても悲しくもありますね。

そうね。まだしたいことはたくさんあるわ。エシカルでサスティナブルな立ち位置の会社は、社会に利益を還元するか、すべての製品をオーガニックにするか、どちらかでしょう。〈Faircloth & Supply〉は、どちらもしているの。私たちの製品は、すべてオーガニックにつくっているわ。オーガニックな生地を使って、オーガニックな方法で染色して。そして、社会に還元もする。本当に、すべてが徹底しているの。全部がエシカルなのよ。

自分のアパレル会社を立ち上げるときに、難しかったことは何ですか? 会社設立の野心を持つのは簡単ですが、その舵取りをしていくのは並大抵のことではないと思います。

まったくね。やっていくうちに学んだわ。自分で考えることはできるし、問題が起これば、それに対処する方法を見つけ出したり。たくさんの人に相談したし、アドバイスももらった。でも、会社を持ってるファッション関係の友だちって、私の年代にはあまりいなくて。会社を設立したのって、24歳のときだもの! だから、立ち上げ時には私は1人っきりだった。ネットで調べまくったし。今はもう3年目で、私も多くのことを学んだから、何もかもがとてもスムーズにいってる。ファッションスクールにも通った私から、そういう学校に行ってる人たちにアドバイスするとすれば、経営学の授業もまじめに聞いた方がいいって伝えるわ! そういう授業では仮定の話が多くて、私も避けてばっかりだったけど、後になってそこでの知識が必要になった。クリエイティヴなこと以外では、一番大切なことなんじゃないかと思う。今でも私は会社のすべてのことに関わってるわ。生地から、ウェブサイト制作会社やフォトグラファーまで自分で選んでる。今、従業員は私を入れて5人。まだまだ小さいけど、でも1人じゃないものね!

最終的に目指すのは、どんなゴールですか?

ネパール以外の国にも援助を広げたいの。もちろんネパールともずっとつき合っていくけど、ほかの働きかけもしたいし、違う文化についても学びたいと思っているから。自然にそうやって進歩していくのね。今は、服がどうやってつくられているか知らない人が多いことについて、よく考えているの。生産者と消費者のあいだには、大きな隔たりがある。両者はまったくつながっていなくて、みんなどこから服が来るのか、その結果がどうなるのかを全然知らないのよ。10年前までは、食べ物も同じだった。工場式農場やオーガニックミートを知っている人なんて、ほとんどいなかったじゃない。そうした意識への変革が、今、アパレル産業に起ころうとしているの。消費者の関心も高まっているし、知識も増えているわ。私が服の生産を頼んでいるのは、オーナーをよく知っている地元のエシカルな工場。ぜんぶ、ここLAにある工場で、工員さんたちはちゃんとした賃金をもらっているわ。労働者から搾取する工場は問題だもの。でも、インドの工場と仕事をしていても、その工場が搾取しているとは限らないのよ。タグにメイドインチャイナとかインドとか書いてあっても、ちゃんとした工場でつくられていることもある。そういう意識も変えたいの。中国とかインドの工場は、技術もあって、本当にいい仕事をするのよ。みんなの考え方を変えたいわ。

とてもいろんなことに携わっているようですね!

そうね、でも変化を起こすのには、1人いれば十分じゃない?

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