グライムを新たな領域へ、シーンで圧倒的な存在感を放つ女性たち

何もわかっていないメインストリームのメディアは、グライム・カルチャーを男の世界として描く傾向にある。そこで私たちは、シーンの中枢的存在の女性たちに、グライム・カルチャーにおけるジェンダーの真相について聞いた。

ジェンダーがグライムの現場で問題だったことは一度としてなく、同じ情熱を音楽に傾けてさえすれば、グライム・コミュニティはどんな者も仲間として受け入れ、いつでも手を差し伸べてくれるのだと誰もが口を揃える。グライム・コミュニティは固い結束で繋がっているのだ。初めて耳にしたグライムのトラックについて、気に入っているMCやバーについて、グライムの未来について、そしてなぜ誰もが『I Luv U』に感動してしまうのかについて、グライムの世界に生きる女性たちに聞いた。

ジュリー・アデヌーガ(Julie Adenuga) ブロードキャスター

最初に聞いたグライムのトラックは?

JMEの『Serious』だったわ。

これまで行った中で最高のレイヴは?

ICAで開かれたDirty Canvas。

これまで聞いた中であなたが最高と思うリリックは?

そんなの選べないわ! え、どれかしら…… JMEの「When I started the game, I picked up a Q/Cue」かしら。

あなたが思う最高のMCは?

ノーレイ(NoLay)。

かけるたびにあなたを別世界に連れて行ってくれる曲は?

スケプタの『Man』。

グライム・シーンであなたをインスパイアしてやまない女性は?

レディ・リーシャー(Lady Leshurr)。

シャーン・アンダーソン(Sian Anderson) DJ、ブロードキャスター、PR、プロモーター 

Sightrackedを始めたきっかけ、そして抱えているアーティストを教えてください。

Sightrackedを始めたのは偶然が重なってのことだったの。ジャーナリストとして活動していた頃、ミックステープをリリースしようとしていたPマネー(P Money)とリトル・ディー(Little Dee)、それとOGのブラックス(Blacks)をよく取材していたの。ほかのジャーナリストたちも、彼らにコンタクトを取りたいときには私を通していたほど、私は彼らと親しくしていた。あるインタビューを終えたとき、ブログやプレス用に私が撮った写真を欲しいと彼らが言ったの。当時、MCたちはそういったプロモーション関連の素材を持っていなかったのよ。あれよあれよという間に私は彼らのPR担当になっていたというわけ。今はPマネーとカポ・リー(Capo Lee)、DJローガン・サマ(DJ Logan Sama)を抱えてるわ。

あなたにとって最高のグライム・レコードを教えてください。またなぜそのレコードなのでしょうか?

ブレス・ビーツ(Bless Beats)がプロデュースした、ワイリー(Wiley)の『Where’s My Brother』かしら。時代を経ても古くならない。イントロはインスト・ベースで、クラシック音楽みたいな始まり。そこへワイリーが、まるで歌うようにメロディアスなMCで入ってくる。でも、歌詞の最初から「I told these youths it’s over(あいつらに、もう終わりだって言った)」と不穏な言葉を繰り出すの。

UKグライム・シーンの今をひと言で喩えると?

地域ごとの特色がある。バーミンガムはサフ・ワン(Saf One)やジェイケイ(Jaykae)、ソックス(Sox)、マンチェスターはハイプス(Hypes)やXP、コヴェントリーはスキャッタ(Skatta)やサブゼロ(Subzero)、ノッティンガムはメズ(Mez)やスノーイ(Snowy)、キエザ(Kyeza)といったように、今はイギリス全土でそれぞれ特色のある荒削りなグライム・サウンドが生まれてきているの。グライムに、各地それぞれの訛りが相まって、まったく違う新しいグライム・サウンドが生まれつつも、そこに昔ながらのグライムから受け継がれたノスタルジアも失われずに残っているの。 

グライム・シーンは男性のものだと感じますか?

男性中心のものではあると思うけど、でも女性が歓迎されないという世界ではないわよ。グライムが主に男性の世界であることをことさら問題視するのはメディアよ。グライム・シーンの人間は誰もそんなこと考えてないわ。 

これまで手がけた中で最高のレイヴは?

クロアチアの「Outlook Festival 2014」で、SBTVとSightrackedが一緒にやったレイヴが忘れられないわね。Pマネーやサー・スパイロ(Sir Spyro)、ローガン・サマ、ニューハム・ジェネラルズ(Newham Generals)、トゥルー・タイガー(True Tiger)、ビッグ・ナーソル(Big Narstle)がステージ上で一堂に会したのよ。

グライム・シーンでは誰と仲良くしているのですか? 家族のような結束を感じますか?

完全にファミリーね。グライム・シーンで仲良くしているのは、ジュリー・アデヌーガ、ヴィッキー・グラウト、ジョセフ・パターソン(Joseph Patterson)、カポ・リー、Pマネー、スパイロってところかしら……たくさんいすぎるわ。みんな最高よ。

あなたが考える最高のMCは?

難しい質問ね。ワイリーとスケプタはとにかく最高。DダブルE(D Double E)も、ニューハム・ジェネラルズも良いわ。マクスタ(Maxsta)のストーリーテラーとしての才能は際立っているし、カポ・リーのフローは新鮮。AJトレーシーのMCスタイルはトラップラップ的な感覚があって好き。Pマネーは力強いリリックで押してくる感が好きだし、チップの言葉は聞き飽きることがない。

これまであなたが聞いた中で最高のリリックは?

スケプタの『iSpy』にある、「If I hear man say my name I’ll ring them. If I hear any gun talk on my 3310, find out where they are and link them.」 

グライム・シーンであなたをインスパイアしてやまない女性は?

ジュリー・アデヌーガとハイパーフランク(Hyperfrank)。「グライム」なんて言葉が知れ渡る前から、グライムを育み続けてくれた人たちよ。彼女たちにとってグライムは仕事なんかじゃなく、愛してやまないサウンドとカルチャーだったの。真のグライムを捻じ曲げてまで大衆に受け入れてもらおうなんて微塵も考えなかったということも素晴らしいわ。本当に尊敬してやまないわ。

ヴィッキー・グラウト(Vicky Grout) フォトグラファー

最初に聞いたグライムのトラックは?

Dizzee Rascalの『I Luv U』だったわ。11歳のとき、バスに乗っていたら他の乗客の携帯電話から聞こえてきたの。

UKグライム・シーンの今をひとことでたとえると?

メインストリームになることなく、ゆっくりとメインストリーム化していると思う。

グライム・シーンを写真におさめ始めたのはいつ頃からですか?

ショーやレイヴに行くようになった17歳のとき。スケプタ(Skepta)の写真を見せると、誰もが私を見て「こんな小柄な女の子が撮ったのか!?」と目を見開くわ。

グライム・コミュニティには家族のような感覚があるのでしょうか?

フェイズ・ミヤケ(Faze Miyake)とAJトレーシー(AJ Tracy)、ノヴェリスト(Novelist)のことは友達以上だと思ってるわ。そうね、家族みたいな固い結束感があるわね。特にButterzのナイトでは。

女性MCがこれまで繰り出した中で、あなたが思う最高のリリックは?

テラー・デイニア(Terror Daniah)の『This Year』で、ミズ・ブラット(Mz. Bratt)が言う「Pretty little lighty but I can get dark」ね。意味は、まあ「私は女。でも調子に乗らないのが身のためよ」といったところ。最高でしょ?

グライム・シーンであなたをインスパイアしてやまない女性は?

シャーン・アンダーソン(Sian Anderson)とジュリー・アデヌーガ(Julie Adenuga)。ふたりともミュージシャンではないけれど、グライム・シーンでは大きな役割を果たしている女性よ。わたしが知るなかで彼女たちほど献身的でかっこいい女性はいないわ。

DJベアリー・リーガル(DJ Barely Legal)

Pretty Weirdを始めたきっかけについて聞かせてください。

2011年にBBCラジオ1xtraのMistajamでレジデンシーをやらせてもらったとき、新人アーティストを発掘して彼らの曲を大衆に聴いてもらえることが嬉しかったの。

DJを始めたきっかけは?

19歳の頃だったと思う。大学生のとき、「なにか趣味を」と考えて始めたのがきっかけだったわ。翌月の家賃を使ってTechnicの1210sを買ったわ……。

最初に聞いたグライムのトラックは?

モア・ファイア・クルー(More Fire Crew)の『Oi』だった。あれがリリースされたとき、私は11歳だったわ。

UKグライム・シーンの今をひと言で喩えると?

イキイキとしていて、普遍的なものになったわね。先月、オーストラリアとニュージーランドでプレイしてきたんだけれど、数年前だったらこんなことは実現していないはずよ。

グライム・シーンには家族のような結束が感じられますか?

グライム・シーンで仲良くしているのは、マンチェスターのチンポー(Chimpo)と、彼のクルー。まさに家族みたいな感じで、いつもお互いを気にかけてるわ。

あなたが考える最高のリリックとは?

リーサルB(Lethal B) vs ワイリーの『Jokes』にある、「Your mum’s got athlete’s foot, flat face, flat chest, blacker than soot」。

いま注目している新人アーティストは?

ブリストル出身のニア(Near)というプロデューサーに注目しているわ。

Cケイン(C Cane) MC

最初に聞いたグライムのトラックは?

ソー・ソリッド(So Solid)の『21 Seconds』。いとこから「この超ハードなトラック聴いたことあるか」って勧められていて、そのうちMTV Baseでそれがかかったときは、全身に電流が走ったようだったわ。

あなたにとって最高のグライム・レコードは?

ゲッツ(Ghetts)ft. ドット・ロットン(Dot Rotten)の『Trained To Kill』かしら。何週間もずっと聴き続けたのを覚えてる 

いま最高のグライム・アーティストのパフォーマンスを聴くには、どのスポット、会場、またはクラブへ行けば良いのでしょうか?

Radar RadioやMode FMはグライム・アーティストたちの作品を多くかけてくれているラジオ局よ。会場ではロンドンのThe Denかしらね。

あなたが書いた中でもっとも気に入っているリリックは?

「tika bango.. ba yebi te ba zali ba accro, ko loba makambu ba salaka te ezalaka te, musala mabe wapi ba sango」。コンゴのリンガラ語よ。グライムの世界でわたしを大きく手助けしてくれた言語なの。

グライム・シーンであなたをインスパイアしてやまない女性は?

シャーン・アンダーソン、ジュリー・アデヌーガ、フレイヴァD(Flava D)、それとミズ・ダイナマイト(Ms. Dynamite)。

リルズ(Lilz) P 

グライム・アーティストたちのPRとして働き始めたのはいつ頃からですか?

15歳で学校を中退したときからよ。フルークス(Flukes)の名作『Wifey Riddim』のプロモーションから、ルードキッド(Rudekid)と手掛けたトラック『So Nice』に至るまで、文字どおり私はずっとグライムの歴史に関わってきたの。

最初に聞いたグライムのトラックは?

最初に夢中になったグライムのトラックは、ワイリーの『Eskimo』、カノの『Ps & Qs』、ディジー・ラスカル(Dizzy Rascal)の『I Luv U』あたりかしら。SLKの『Hype Hype』も不朽の名作だと思う。

UKグライム・シーンの今をひと言で喩えると?

「健全」! メインストリームから熱い視線が向けられているにもかかわらず、グライムに本来の魂を死守しようと奮闘するコミュニティや熱狂的ファンたちがいるというのは本当に素敵なことだと思うわ。 

あなたが関わり始めた当時、グライム・シーンは正当に大衆へと伝えられていたでしょうか?

まったくそうは感じなかったわ。真のグライムをそのまま伝えてくれそうなラジオ局なんて限られていて、あるのはChannel AKAぐらいのものだった。あふれかえるクズの中から本物の才能を見極めるのも難しい状況だった。でも、BBKJsやThe Movement’sが、「グライムは、チャートもこの国も席巻できるだけの力を持った確固たる音楽アートのジャンルなんだ」とシーンのみんなに希望を与えてくれたの。

Eskimo Danceのようなイベントでゲストリストを取り仕切るというのはどんなものなのでしょう?

地獄よ。本当に地獄。イベントの数日前からスマホの着信は直留守にしてるわ。

Eskimoパーティを3単語で表現してください。

私にとってはまず「面倒」ね。そして「ストレスフル」と「忙殺」。レイヴァーたちにとっては「Best in Grime(グライムで最高のイベント)」じゃないかしら。 

これまでに仕事でやらねばならなかったことの中で、もっとも狂気じみていたのは?

スーツケースに数千枚のCDを詰め込んでキプロスのアヤナパまで行ったこと。入国管理局で訝しがられて大変だった。

グライム・シーンで仲良くしているひとは?

Eskimo Danceやほかのパーティでワイリーに次いで重要な役割を果たしているチーキー(Cheeky)ね。ゲッツは、早朝だろうが真夜中だろうがいつでも電話をかければ私を元気づけてくれるひと。ワイリーは、もうワイリーであることにただただ感謝よね。電話をかけて話をさせてもらえる立場にいることが今でも信じられないわ。チップとノヴェリストは、いつでも私の心を落ち着けてくれるひとたち。深い人間味に満ちた人たちよ。

グライム・シーンであなたをインスパイアしてやまない女性は?

ハティ・コリンズ(Hattie Collins)とシャンテール・フィディ(Chantelle Fiddy)。ふたりはこれまで一度としてグライムというカルチャーを妥協したことがなくて、だからこそ伝説的存在にまでなった人たち。ふたりがいたから、私を始め女性の多くがキャリアを築くことができているの。ハイパーフランクは、あの恐れ知らずで単刀直入なジャーナリストとしての姿勢に脱帽よ。

ジョージアLA(Georgia LA) プレゼンター、プロデューサー、ジャーナリスト 

最初に聞いたグライムのトラックは?

ディジー・ラスカルの『I Luv U』。学校の送迎バスでMDをかけてくれた同級生たちに感謝よ!

あなたにとって最高のグライム・レコードは?

スケプタの『iSpy』は間違いなくリストに入るわね。でも私はもともとソフトなサウンドが好きで、カノの昔の曲、『Night Night』とか『Brown Eyes』、『Px & Qs』なんかが好きなのよね。

好きなトラックは?

ナタリー・ストーム(Natalie Storm)の『Boys for Breakfast』。Eskimo Riddimで朝食に男を食べるっていう歌詞なのよ。

好きなMCは?

個人的に、今でもデヴリン(Devlin)こそがもっとも才能あるMCだと思ってるの。DダブルEはとにかく笑わせてくれるから好き。『Street Fighter Riddim』なんて、「Coz I’m shocking MCs like Blanka / I got money in the bacnk, I;, a banker / You ain’t got money in the bank, you’re a wanker」なんて爆笑でしょ?

グライム・シーンであなたをインスパイアしてやまない女性は?

ハティ・コリンズがこれまでに成し遂げてきたこと、彼女がこれまでにどれだけの人たちを手助けしてきたか、これまでどれだけのアーティストたちを育て、世に送り出してきたことか——あの姿勢、あのあり方はインスピレーショナル以外のなにものでもないし、私もああなりたいと常に思っているわ。

ハティ・コリンズ(Hattie Collins) 『This Is Grime』著者

『This Is Grime』を書こうと思ったきっかけについて教えてください。

グライムの本を書こうと何年も考え続けていたんです。でも出版社とのタイミングがなかなか合わなかった。そこへ2014年ごろになって、「もう一度やってみよう」という気になったんです。昨年末、父が重い病気を患い、恋人との別れもあって、「何かプロジェクトに取り組もう」と。グライムに関する本を書くというのはもう随分と長いあいだ温めていた構想だったし、なによりもグライム・シーンは正当に世に認められるべきだとずっと信じていました。そこでオリヴィアに連絡をとると、一緒に取材に行って写真を撮ってくれるということになりました。良いものができたと自負しているけれど、ひとつ残る後悔は、フィディをプロジェクトに引き込めなかったことですね。10年のうちにはもしかしたらフィディと何かできるかもしれません。

最初に聞いたグライムのトラックは? そして、それを始めて聞いたとき、どう感じましたか?

シャンテール・フィディがかけてくれた、ディジーの『I Luv U』でした。最初に聞いたときは、「気持ち悪いから止めて!」と思いましたね。当時の私はアメリカのヒップホップやR&B、ダンスミュージックのファンで、『I Luv U』はノイズにしか聞こえなかったんです。でもそれが数日後、改めて聴きたくなって、フィディに聴かせてもらったところ、突如としてそのスリリングで巧妙で、それまでに聞いたことのない新しいサウンドを理解してしまい、虜になりました。

あなたにとって最高のグライム・レコードとは?

それは難しい質問ですね。でも選ばなければならないとすれば、『When I’m ‘Ere』でしょうか。グライム本来のエネルギーと世界観が完璧に表現されているからです。まず、グライムとは本来「ソロ」では成し得なかったジャンルで、クルーの一員として誰もがグライムを作り出していたわけです。そういう意味で、『When I’m ‘Ere』がクルー・チューンであることに私は感動してしまいます。『When I’m ‘Ere』は、未だに正当な評価を得ていない鬼才プロデューサー、ダニー・ウィード(Danny Weed)によるもので、またフィーチャーされているMCも当時もっとも活躍していた面々ばかり。1分中に140ビートが繰り出される中、MCたちが8バーずつ受け持ってラリーを展開し、冷たいシンセサイザーのサウンドが重なって、そこへワイリーが登場する——グライム・カルチャーが余すところなく表現された名盤だと思います。 

i-Dであなたが初めて記事を書いたグライム・アーティストは誰でしたか?

2004年か2005年あたりに、Cassette PlayaやJC de Castellbajacの服を着たJMEとジャマー、スケプタの3人を取り上げた記憶があります。2005年、シャンテールと私は、ティム&バリー(Tim & Barry)のアシストのもと、ジェイソン・エヴァンス(Jason Evans)と組んで20ページものの撮影をしました。カノやテラー・デイニア、ロール・ディープ(Roll Deep)、レディ・ソヴ(Lady Sov)といったアーティストたちをフィーチャーしました。 

女性であるということで、グライム・シーンで非難を浴びた経験はありますか?

一度だけ、皮肉なことですが、中産階級の白人男性たちから非難を浴びたことがあります。以前、IXORというフォーラムが開かれたときに、物知り顔の白人男性たちが寄ってたかってグライムを学術的に語っていたんです。男性ジャーナリストたちに媚びながら、シャンテールや私がそれまでに果たしてきた貢献を無視して、私たち女性がこのシーンで何を象徴しているかも理解せず、私たちがグライム・シーンの男たちすべてと肉体関係を持っているだのと語っていました。私はレズビアンですから、笑わずにいられませんでしたね。グライム・シーンの男と寝た覚えなどひとつもありませんから——でもまあ私が忘れてしまっただけなのかもしれませんが! 私を愛してくれたのは、グライム・シーン自体です。中でも特にダニー・ウィード、ターゲット(Target)、JME、カノ、スケプタ、ローガン(私がしつこくしても我慢してくれました)、チップ、ティンチー(Tinchy)、ノヴェリスト、そしてやはりワイリーですね。過去何年にもわたり、彼らは私にとてもよくしてくれました。

あなたがシーンに関わるようになった時代と比べて、現在のグライム・シーンは何が変化しましたか?

グライム・シーンは、起源から現在に至るまで、グライムへの愛でできているという点において何も変わっていません。お金はついてくるときについてくる。DIY感覚への回帰はパワフルですね。これは声を大にして言いたいのですが、「レコード・レーベルなんか必要ない、サウンドを軟化させる必要も、売れる必要もない」という精神を貫いているJMEはもっと正当に評価されるべきです。グライムで大切なのは、「品位」なのです。シーン自体は、以前よりもずっと白人化されてきていますね。でもヒップホップでも同じことが起きましたし、シーンが存続するには成長と繁栄をもってより多くの人々にサウンドやカルチャーを届けなければなりませんからね。ワイリーやスケプタといった大御所アーティストたちがグライム本来の品位をノヴェリストやストームジー(Stormzy)といった若手アーティストたちに伝承しているのは素晴らしいことだと思います。皆で一緒に取り組まなければ、いつかシーンは崩壊します。

あなたにとって最高のMCは?

ワイリーがワイリーであるという理由で、ワイリーが私にとって最高のMCです。

あなたがこれまでに聞いた中で最高のリリックは?

ディジーの『Boy In Da Corner』、スケプタが書くリリック全て、JMEやカノ、ワイリーが書くすべてのリリック——でも特に好きなのは(なぜだか私にも分かりませんが)ワイリーの『WD25 Freestyle』にある「Plus I eat lamb curry and roti/ I’m a war MC they can all quote me/ And I might puch you in the boat-y, when you get up everything seems floaty/ I guess you want to find me but I move low-key」の部分です。好きで好きでたまらないんです! それと、「I only do black on black grime if I have to/ I know it ain’t good, let’s hope I don’t have to」もパワフルですね。

グライム・シーンであなたをインスパイアしてやまない女性は?

グライム・シーンのすべての女性です。シャンテール、ローラ・ハイパーフランク、ジュリー、リルズ、オリヴィア、ヴィッキー、Wired PRの創始者レイチェル・キャンベル(Rachel Campbell)、それにサラ・ロックハート(Sarah Lockhart)……挙げ始めたらきりがありません。文字どおり、シーンの女性すべてにインスパイアされますから。その情熱、その献身、その影響は、グライム・シーンの男性のそれを上回るほどですよ。

フレイヴァD(Flava D)

あなたがグライム・シーンに関わり始めた頃と今では何が変化しましたか?

インストゥルメンタルのクオリティは良くなり続けているわね。プロデューサーとして、私はMCたちよりもビートに重きを置いた音作りをしているの。今あるビートは、昔に比べて格段に力強い。ミックスダウンなんかね。フェスティバルを沸かせるヘヴィーな力強さのものがたくさんある。

最初に聞いたグライムのトラックは?

Channel Uでかかっていた、サウス・サイド・オールスターズ(South Side Allstars)の『Southside Riddem』かな。聞いた瞬間に魅了されたわ。ボーンマスに住んでいた私は、海賊ラジオすら聞けない状況だったんだけど、週に一度だけUKG DJを流してくれる地元ラジオ局があったの。毎週木曜は、敬虔な信者のように必ずそのラジオ局の放送を聴いてたわ。

これまであなたが参加した中で最高のパーティは?

クラブFabricのButterzナイトでプレイさせてもらったことで、私の人生は変わったわ。

職業でひとに驚かれたりすることはありますか?

ときどき、「え? 君は白人の女性だったのか!」って驚かれるときがあるわね。

シーンでは誰と仲良くしているのでしょうか? 家族のような結束を感じますか?

Butterzのメンバーとは親しいわね。あれはレーベルじゃなく、完全に家族よ。

あなたにとって最高のMCとは?

DダブルE。「Head get mangled & dangled/ to the side just like I wear my Kangol/ nowadays I’m on arms/ Just like a bangle」っていうリリックだけでも、彼を最高のMCだと思う。

ローラ “ハイパーフランク” ブロスナン(Laura “Hyperfrank” Brosnan) ブロガー、ジャーナリスト

最初に聞いたグライムのトラックは?

ディジーの『Stop Dat』が最初だけど、ラジオからテープに録音までして聴いたのは、『I Luv U』だったわ。

この10年間でイギリスのグライム・シーンはどう進化したと考えていますか?

今現在は、力強い独立心溢れる家族のようなものになっているわね。大手レーベルからのプレッシャーもなく誰もが大胆なグライムを創造しているの。グライムはクラブというクラブすべてから文字どおり投げ出され、その後大手レーベルにことごとく功績を奪われ、汚され、果てには打ち捨てられたの。シャンテール・フィディはグライムを「ガレージへのFuck you」と呼んだけれど、私もそれに同感。ガレージにもだけれど、メインストリーム全体への仕返しこそがグライムなのよ。今、私たちは独自にGRM賞というものを作り、スケプタはマーキュリー賞を受賞するに至っているし、今年はハティ・コリンズとオリヴィア・ローズが『This Is Grime』という本を出版する。数年前に誰がグライムのここまでの繁栄を想像できた? ストームジーがあのグライム・フリースタイルでチャートのトップ20に入るなんて、正気の沙汰じゃないわ!

グライム・シーンを男性のものと感じるときはありますか?

グライム・シーンを動かした大きな力は、ほとんどが女性によるところが大きかったと思っているわ。だからシーン全体としてこれを「男性のもの」とは思わない。でも音楽自体となると、社会が「そこにある女性の存在をどう扱ってよいかわからない」という背景が原因で、ブランディングとして女性が前面に出るのが難しい世界だなとは感じるわね。ノーレイの才能は疑う余地のないものだし、ライオネスも同じ。グライム・シーンの女性たちが、そのレベルを披露して、表現を通して意見を伝えれば、当然のリスペクトがきちんと示されるのがグライム・シーンよ。私が問題の核と考えているのは、ファンたちよ。ファンと、ファンが勝手に持っているイメージ。パソコンにかじりついているような男の子たちが、やれ私がJMEと寝ただの、やれ私がガールフレンドと家でテレビ番組『EastEnders』を観てるだのって事実無根の噂を流しているわけよ。ここから女性のグライムが前進するには、私たち女性が「Fuck you」という姿勢を打ち出して、好きなように作りたい音楽を作っていくことが不可欠だと思うわ。そうしていけば、絶対にサポートは付いてくる。

ジャーナリストとしてグライムをドキュメントするキャリアはどのようにして始まったのですか?

私はずっと音楽に関係する仕事をしてきたつもりよ。RWDやUKMusic、GrimeForumといったフォーラムには必ず参加してきたし、MySpaceなんかを通して様々な人たちと繋がり、最新のトラックを発掘しようと毎日必ずKazaaやMSNをチェックしていたわ。友人のプレシャス(Precious)が「ブログを始めたらどうか」と勧めてくれたのが2006年のこと。それをMySpaceでも公開したら火がついたの。ハティとシャンテールが「『Blues & Soul』誌と『RWD Mag』誌に記事を」と私に依頼してくれて、ジャーナリストとしての道が開けた。その頃にようやくロンドンへ引っ越して、そこからはずっと脇目も振らずにひた走ってきたわ。

クラブでかかると興奮が絶頂に達するトラックは?

私が「ハイパーフランク」なんて呼ばれているのにはちゃんとした理由があるのよ。ラフ・スクワッド(Ruff Sqwad)の『Xtra』、ディジーの『Stop Dat』、ボーイ・ベター・ノウ(Boy Better Know)の『Too Many Man』、JME ft. ギグス(Giggs)の『Man Don’t Care』、Pマネーの『Head Gone』、サー・スパイロがプロデュースしたものやミックスを手掛けたものはすべて。それとニューハム・ジェネラルズの2003年オリジナル版『Frontline』、ワイリーの『Bow E3』、スキッツ・ビーツ(Skitz Beatz)の『Battle Riddim』、DダブルEの『Street Fighter』、チップの『Fire Alie』、スプーキー(Spooky)の『Spartan』、モア・ファイア・クルー(More Fire Crew)の『Oi』、それと、スケプタが「God forgive me...」って言うのを聞くと、私はいつも例外なく夢見心地になっちゃうの。

グライム・シーンであなたをインスパイアしてやまない女性は?

パワフルに活動していて、自分自身の限界を押して創作活動をしているだけでなく、グライム・シーンを新たな領域へと押し上げている女性が実にたくさんいる。シャーン・アンダーソンもジュリー・アデヌーガも、リルズもシャンテール・フィディもハティ・コリンズも、みんなそう。この5人の女性はこれまでも、そしてこれからも人々にチャンスを作り出し、インスパイアし続ける存在。私が知る女性は皆が様々なことをこなしている。DJから執筆、イベント運営、PR、アーティストのマネージメントまで、実にハイレベルでこなしているわ。

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