詩人・最果タヒが描く、「光」を感じさせる言葉たち

詩人、小説家、エッセイスト。幾つかの肩書きを持つが、どれも共通するのは「言葉」をツールに表現活動を行うということ。多くの女性たちから注目を集め、共感される「言葉」を描く最果タヒが本企画のために書き下ろした詩。

10代の頃から自身のブログにて文章を綴っていたものが「詩」だと評価されキャリアをスタートした最果タヒ。その後コンスタントに作品を発表すると同時に現代詩手帖賞や中原中也賞を受賞するなど、着実に詩人としての道を歩んできた。そんな最果の書く詩は、ときに難解だと言われることもある。その理由の一つは、執筆環境や方法が大きく影響しているのかもしれない。

日頃、詩や文章を書く作業は喫茶店や移動中の電車の中など外出先で行うことが多く、その場に浮遊する人々の会話や雑踏からインスピレーションを受け言葉を紡ぐという。それらは大抵、パソコンだけでなくiPhoneのメモ機能を使って行われるらしい。最果にとって言葉は「目で読む」のではなく「耳で聴く」ものであり、「ひとつの言葉が生まれたときに次に来る言葉を探すというイメージ」と話してくれた。世の中に散りばめた言葉を拾い集めて、次々とつなぎ合わせていく。まるで積み木をするように、言葉遊びを行なっているのかもしれない。

今回、彼女は『the fifth sense』のために日常に溢れる「光」を題材にした新たな詩を書き下ろしてくれた。

光の匂い

夜のあいだは、この都心の大気圏を、巨大なナイフが羊羹みたいに切り離している。すきまに、宇宙から溢れてきた透明の光が挟み込まれてまた明日、私たちは距離を見誤る。ゆがめられていくことに誰も気づかないで、愛しているを信じている。 

朝は、光の匂いがする。せいいっぱいためこまれたものが、蒸発をして世界の壁すべてにへばりついている。生きていることがあいまいでもかまわないじゃないか、勝手に美しくいてくれる、草や雲があるというのに、どうして生きることを奇跡と呼ぶの。

縄跳びをしている子が、突然飛んだまま消えてしまう気がして見つめていた。きみがいなくなってもいいよ、たぶん、重ねてきた時間が光に飲まれただけだから、慣れることは平気だよ。お花見、あじさい、すずらんの群れ、もう永遠にこんな景色は見られないと言いたげに毎年カメラをもつ人が、宇宙でいちばんうつくしい春。

最果タヒ

http://tahi.jp

This Week

タイムトラベルとアフロフューチャリズムが導く未来

ラシーダ・フィリップスとキャメイ・アイワの手によって生み出された、タイムトラベルとアフロフューチャリズムを駆使し、アートと音楽によって女性を鼓舞するコミュニティスペース〈Community Futures Lab〉の真相にせまる。

Read More

アイスランドが誇るガールズラッパー、レイキャヴィークルダエトゥール

レイキャヴィークルダエトゥールがやってくる!

Read More

香りの言語

おそらく、人間の持つ感覚で最も研ぎ澄まされているのは嗅覚だ。ある研究では、人は1兆もしくはもっと多くの香りを嗅ぎ分けられることが示されている。しかし、言語はそうした香りを限られた語彙の中でしか表現できない。

Read More

マネキン・アーティストFEMMを動かす5つのファクター

ラバー製の衣装を身にまとい、過激なラップに合わせてパフォーマンスする、2体の女性型マネキンからなるダンス&ラップ・デュオFEMM。新たなポップ・アイコンとして注目を集める彼女たちの、その特異なクリエイティビティを形作る要素とは一体何なのか?

Read More

香りを言葉で描く:作詞家、詩人、劇作家、作家、脚本家

“香り”はどのようにクリエイティヴィティを刺激し、その存在はどのように言葉で語られてきたのだろうか。作詞家、詩人、劇作家、作家、脚本家として活躍する5人の女性の香りのかかわりにクローズアップ。

Read More

ジャミラ・ジョンソン=スモールの自由奔放な身体表現

彼女自身の言葉を借りるなら、ジャミラ・ジョンソン=スモールがダンスを愛しているのは、それが「ラディカルかつ社会的な命題」だから。そして実際、そのラディカルな側面は、ジャミラ本人がステージのオンオフで見せる姿からもはっきりと浮かび上がってくる。

Read More

レバノンのナイトライフを彩るアンダーグラウンドな女性たち

かつては男たちだけだったレバノンの首都、ベイルートのクラブシーン。その世界にラディカルに分け入り、そのシーンを震撼させるアンダーグラウンドで活躍する女性たち5人に話を訊いた。

Read More

The Wisely Brothers、歌に乗せる彼女たちの想い

繊細で瑞々しい楽曲と自由で飾り気の無いライブパフォーマンスに人気急上昇中の3ピースガールズバンドThe Wisely Brothers。その懐っこい人柄は見る者を惹きつけ無防備にさせる、そんな不思議な魅力をもつ。

Read More

イエルサ・デイリー=ウォードによる詩〈香り〉

詩人、作家として活躍するイエルサ・デイリー=ウォードが、スポークン・ワード・ポエトリーに出会ったのは、南アフリカでのある夜のこと。そしてそれが、彼女の人生を変えることとなったのだ。

Read More
loading...